夜の街を抜けて、静かな路地裏に佇む治療院の前に立つ。
看板には「灼熱鍼灸院」と力強い筆致で書かれている。
バンド活動の合間に訪れたこの場所で、俺は新たな力を手に入れるためにお灸を試すことにした。
中に入ると、薄暗い照明の中で、静かな音楽が流れていた。
そのリズムが、まるで心臓の鼓動のように響く。
受付には、黒衣を纏った治療師の翔が待っていた。
彼の鋭い眼差しは、ただの治療師ではない何かを感じさせた。
「ようこそ、灼熱鍼灸院へ」と翔は低く力強い声で言った。
「お前の心と体を燃やし尽くして、新たな力を手に入れる覚悟はできているか？」
「もちろんだ。もっと強くなりたい」と俺は答えた。
翔は無言で頷き、治療室に案内した。
そこはシンプルな空間で、中央には治療台が一つ。
翔は手際よく艾を取り出し、形を整えた。
その動きには、一切の無駄がなく、まるで戦士が戦いに備えるような緊張感が漂っていた。
「お灸の火は、お前の中に眠る力を呼び覚ます。その熱を恐れるな。その熱こそが、お前の魂を燃やすんだ」と翔は言った。
彼は艾を据え、火をつけた。
瞬間、じんわりとした熱が背中に広がり、その感覚は次第に強まっていった。
俺は目を閉じ、その熱に耐えた。
「痛みを恐れるな。その痛みが、お前を強くする」と翔の言葉が耳に響いた。
熱が増し、背中に鋭い痛みが走る。
しかし、その痛みはまるで音楽のビートのように心地よく、俺の中にある全ての不安や恐れを焼き尽くしていくようだった。
「お灸の火は、内なる闘志を呼び覚ます。お前の中に眠っている力を引き出すんだ」と翔は続けた。
俺はその言葉に励まされ、痛みの中で心を強く持った。
お灸の熱が次第に和らぎ、痛みも薄れていくと共に、心の中に新たな力が湧き上がるのを感じた。
「これでいい。お前は今、新たな力を手に入れた」と翔は言った。
俺は感謝の意を述べ、治療院を後にした。
外の夜風が心地よく、体の中には新たなエネルギーが満ちているのを感じた。
お灸の火と共に、新たなステージに立つための力を手に入れたのだった。
その夜、俺はお灸の熱と共に、心の中に新たな闘志を宿し、再び歩み出す決意をした。
