日差しが柔らかく降り注ぐ午後、私は都会の喧騒から離れて、静かな住宅街にある小さな治療院を訪れた。
そこは、友人から紹介された場所で、古くから伝わるお灸の治療を受けられるという。
入り口をくぐると、淡い香りが漂う落ち着いた空間が広がっていた。
受付には、温かい笑顔で迎えてくれる女性、名は真由美さん。
彼女はお灸の専門家で、穏やかな雰囲気が印象的だった。
「いらっしゃい。今日はどのようなご用件でしょうか?」と真由美さんは優しく問いかけた。
「最近、心身の疲れが溜まっていて…。お灸が良いと聞いて」と私は答えた。
真由美さんは頷き、私を治療室に案内した。
そこは畳敷きの静かな部屋で、窓からは柔らかな光が差し込んでいた。彼女は手際よく艾を取り出し、私に説明を始めた。
「お灸は古くから伝わる治療法で、心と体のバランスを整える効果があります。今日はゆっくりとその温もりを感じてみてください」
私はベッドに横たわり、目を閉じた。真由美さんの手が背中に触れ、丁寧に艾を据えていく。
その手の温もりが心地よく、次第に緊張が解けていくのを感じた。
「お灸の熱は、ゆっくりと体に浸透していきます。焦らず、その感覚に身を委ねてください」と真由美さんは静かに語りかけた。
火をつけられた艾からは、じんわりとした温かさが広がり始めた。
その感覚は、まるで優しい陽だまりの中にいるようで、心の奥底まで温もりが届くようだった。
「お灸の温もりは、体の中にある冷えや緊張を解きほぐしてくれます。その温かさに包まれて、心もリラックスするのです」と真由美さんの声が心地よく響いた。
私はその言葉に身を委ね、温かさが体中に広がっていくのを感じた。
その感覚は、まるで母の手に包まれるような安心感を伴い、心の中に溜まっていた疲れやストレスが溶けていくのを感じた。
「お灸はただの治療法ではありません。それは心と体をつなぐ大切な時間なのです」と真由美さんは続けた。
お灸の温もりが次第に和らぎ、痛みも消えていくと共に、私は心も体も軽くなるのを感じた。
その感覚は、まるで新たな自分に生まれ変わるような清々しさだった。
「これで治療は終わりです。ゆっくりと起き上がってください」と真由美さんは優しく声をかけた。
私は感謝の意を述べ、治療院を後にした。
外に出ると、風が心地よく頬を撫で、体の中には新たなエネルギーが満ちているのを感じた。
お灸の温もりが、私に新たな活力を与えてくれたのだった。
その日、私はお灸の温もりと共に、新たな一歩を踏み出す決意をした。