繊細なもぐさではなく、雑物がかなり混じった粗いもぐさを、硬くひねり、母指大と小指大の中間くらいのお灸を作る。
雑物と言っても、もぐさの中には漢方薬が混じっている。中国製の謎の漢方薬入りのもぐさである。
治療法は単純かつ明快で、触診で体の圧痛やコリを探し、そこにお灸をする。
脈診も舌診もしないし、腹診も背候診も細かいことは気にしない。
陰陽五行も無視している。経絡経穴も基本的には重視しない。
触診は、繊細ではなく、荒っぽく雑さも目立つ。
指圧に近い。
しかし、ダイナミックである。
症状に関係なく、感覚に任せた素早い触診で、圧痛やコリを探し出し、その点をよく揉みほぐし、墨で灸点をつける。
そしてお灸をする。
基本は知熱灸である。
お灸の後もその点をよく揉みほぐす。
徹底した圧痛とコリに対するお灸である。
ツボの数も多くなることもある。
お灸の壮数も多くなることもある。
熱くなるまでお灸をすることもある。
火傷をすることもある。
がっつりとお灸をしてもらいたい人が好む手法で、体格のいい人や肥満気味の人に対して、このお灸治療は効果的であるとされている。
虚弱体質のような虚証患者であっても、このお灸のダイナミックさ、熱さ、力強さに、体に活が入れられるらしいので、治療範囲は意外と広い。
弱いものに対しても、強さで生命力を目覚めさせるような治療である。
このお灸は治療後、発汗、吐瀉、下痢などの激しい反応を起こすことがあるが、こうした反応は漢方の古方派の吉益東洞先生の主張する「瞑眩反応」とよばれる現象で、治療効果を上げると考えて、賛否はあるが激しい反応を意図的に起こしていることもある。
このお灸の中心的な考え方は、吉益東洞先生の万病一毒説であり、すべての病気がひとつの毒に由来するとし、この毒を制するため、強い熱を発生させる粗いもぐさを用い、毒の反応点と考えられる圧痛やコリに対して、それを消失させるような攻撃的なお灸を行う。
一見、威圧的で乱雑さを伴うようなお灸ではあるが、そこに厳しいながらも、愛情があれば治療として成立するものなのかもしれない。