一時期、塩灸を研究していた。塩灸は塩を土台に使った隔物灸である。
伝統的には臍に行うことが多い。方式はいろいろある。
塩の選び方やもぐさの選び方にもこだわる必要があるだろう。
湿度の多い時期は取り扱いに注意を要する。ただし湿度の高い塩を使用することもあるらしい。
もぐさは、一般的には粗いもぐさを使うようだが、質のよいものでもいいと思う。熱の柔らかさからいうと質のいいものの方がよさそうな気もする。
臍は体の中心である。東洋医学では、三焦の腑ともいわれている。陰陽調節作用や陽気の回復に効果的ともいわれている。弱ったからだに活力を与えることもでき、臍一穴で全身治療にもなる。
効果的には、腹部内臓に対する効果はもちろんで、下痢、便秘や冷え性にも効果的である。
手足の冷え性の場合、腹部や腰部に熱がこもっていることが少なくない。
小腸との関係から免疫機能の向上も可能と思われる。
腹部治療になるが腰痛や肩こり、そして頭痛にも効果的で、頭がすっきりすることが多い。これは迷走神経を通じて、脳幹への効果が出ているのかもしれない。
また各種アレルギーにも効果的といわれている。これはドイツのフケネ博士が臍への麻酔薬の注射でアレルギー治療を行っていたことから納得はできる。
臍の塩灸一穴でもかなり効果があるし、それ以外に余計なことをしないほうが、自然治癒を引き出しやすかったりする。基本的に臍には温灸か隔物灸しか治療方法がないと思う。
お灸でどこか一穴のみを治療する場合、塩灸ができるのであれば臍に行う。それだけ効果が高いからだ。一穴で複雑な穴性構造を持っている(これは他のツボにもいえることではあるが)。
夏場に塩灸を行うことは意味がある。夏は汗をかき、塩分が不足するからである。高血圧などの一部疾患を除けば、過度の減塩志向はあまりよくない。
臍に塩灸を行うことで、塩の成分が非科学的かもしれないが、体に浸透すると考えている。
お灸自体ももぐさの成分が体内に浸透すると思っている。
塩灸をすると舌が塩辛くなったり、棒灸をすると大便から棒灸の匂いがすることがあるらしい。それを考えるともぐさの質と体の相性は重要と思われる。
もぐさ自体が体に有害という説やもぐさ(よもぎ)アレルギーを持つ人も中には存在するだろう。
またお灸の煙が有害という意見もある。
特に粗いもぐさはその点は注意が必要かもしれない。