彼は、いつものように煙管をくゆらせ、灸台の前で腰掛けていた。
小さな部屋にはお灸の香りが漂い、緊張感が立ち込めていた。
「さて、今夜はどんなお話をしようかな」
彼は自問自答しながら、灸台に並べた針と灸を手に取った。
窓の外には雨が降りしきり、夜の闇が迫っていた。
彼の元を訪れる患者たちは、様々な不調を抱えていたが、彼はその身体の声を聞き、お灸を用いて病を癒すことに命を捧げていた。
最初にやって来たのは、中年の女性だった。
彼女は肩こりと頭痛に悩まされ、疲労困憊の様子だった。
彼は慎重に針を刺し、お灸を灼いた。
「お灸の熱さを感じてください。それがあなたの疲れを癒していきます。」
彼女は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸を始めた。
次に、若い男性が訪れた。彼はストレスからくる不眠症に悩まされ、眠りを求めてやって来た。
彼の背中には肩から腰にかけてのこりが見えた。
「お灸は、体のバランスを整え、心地よい眠りをもたらします。」
彼はお灸の熱さに身を委ね、次第にリラックスしていった。
灸台の中から、夜の雨音が静かに聞こえ、部屋は穏やかな雰囲気に包まれた。
最後に、年配の紳士が訪ねてきた。
彼は腰痛に悩まされ、長い年月を痛みと共に過ごしていた。
彼はお灸の力を信じ、希望を胸にしていた。
「お灸は、年齢に関係なく、あなたの痛みを軽減させます。」
彼はお灸の温かさに包まれ、笑顔を見せた。
夜が更け、患者たちはそれぞれの道を歩み始めた。
彼は小さな部屋で灸と向き合いながら、新たな物語を待つのだった。