腹部のお灸を治療上重視しているのは、夢分流に影響されたからかもしれない。
沢田流でも腹は重視されている。日本鍼灸や漢方では腹診を重視する流派もある。
腹部のお灸は、胃腸を中心とした治療になることも多い。
お灸は、裏寒を温める作用もあり、胃腸が弱い人にも効果的である。
不健康な人は胃腸に問題があることが多い。
便秘や下痢も胃腸の問題と考えることもできるし、舌の苔が多かったり、白かったりすると胃腸に問題があることが多い。
胃腸に問題があると、血色がよくないこともあるが、これは脾胃と血の関係を考えても理解できる。
それから手足が冷えやすい。胃が弱いと反射的に僧帽筋や三角筋が張りやすいので、肩こりも起こりやすいし、肩甲骨間もコリやすい。
経絡的には、胃経や大腸経は首の前面部に影響することもあるので、首の問題も起こりやすい。
胃腸が弱いと、腹部は軟弱なことも多く、浸水音がすることもある。
便秘があると腹部は部分的または全体的に張ることが多い。
心下部はつまったような感じになることが多い。
新陳代謝が低下すると水毒が胃腸にたまりやすいと言われている。
このときは腹部は軟弱感があり、脈も弱くなることがある。
体の疲労度はかなり高い。手足も冷えやすい。
胃腸のお灸とは、ツボ的には、中脘と気海または関元が中心になるが、胃経の天枢、滑肉門、大巨も良いと思う。
天枢が肝、滑肉門が脾、大巨が腎と考えることもできる。
天枢は大腸の募穴でもある。
滑肉門は、滑に氵に骨という字が入っているため水、腎に効果的という意見もある。
肉は肌肉という意味で脾に効果的という意見もある。
大巨は腎大腸に効果的という意見もある。
下痢や便秘があるときは臍への塩灸も効果的である。
胃腸の弱りは、気血の不足につながることが多いので、中脘にお灸をすることで脾胃を治療することで血への効果を狙い、気海にお灸をすることで気に対する治療を行うことも有効だと思う。
いずれも多壮灸が有効だと思う。
しかし、刺激は強さに気を遣う必要があると思う。
腰痛があれば、腎の問題も無視できないと思う。
気海や関元、大巨などお灸は腎に対する治療にもなる。
腹部のお灸は、背部に対しても効果的である。
腹部のツボと背部のツボは相互に関連していると思う。
腹部という限定された範囲をどう治療していくのかは、今後も研究する必要があると思っている。