私は、広大な草原の中で、ひとりのお灸師として生きていた。
人々がやってくることは少なかったが、彼らが訪れるときには、心に疲れを抱えていた。
ある日、草原に足音が響いた。若い男がやってきた。
彼の目には深い悲しみが宿っていた。
私は、お灸を施すことで少しでもその痛みを和らげたいと思った。
火を灯し、お灸の温もりを伝える。
彼の目に涙が溢れた。
彼の背中には傷跡があり、その傷は心にも深く刻まれていた。
「君は何者だ?」と彼は尋ねた。
私は微笑みながら答えた。
「私はこの草原のお灸師だ。心の傷も癒す力を持っている」
彼はじっと私を見つめ、そして笑顔を浮かべた。
その笑顔は、少しずつ消えていく痛みを抱えた心の中で、ほんのりとした光を灯すようだった。
彼は日が暮れるまで草原にとどまり、私のお灸を受け続けた。
そして、夜風にそっと感謝の言葉を囁いた後、彼は去っていった。
その後も、草原に訪れる人々は少なかった。
しかし、彼らが訪れるたびに、私はお灸の力を通じて、少しでも癒しと温もりを届けることができた。
草原のお灸師として、私は人々の心をなだめ、痛みをやさしく包み込むことができる存在でありたい。
それが私の使命だと心から信じている。