最近は、お灸の腹診ではまずは丹田(下腹部)の力を見ることを大切にしている。胃腸や心下部や肝臓の張りやコリなども重要である。
腹診に関連して、募穴診も重視している。募穴には臓腑や経絡の気が集まりやすいと言われている。
肺の募穴は、中府。肩こりや肩の痛みでも圧痛が出やすい。風邪のときは熱がたまりやすいといわれている。秋(肺)の季節はこのツボに反応があるか確認する必要もあると思う。肺の募穴なので呼吸器の疾患の時に反応があるとも言われている。
肺経は胃の中脘より起こり、まず中府に来る。肺は脾胃の子という関係になる。中府は脾胃と連結関係になる。肺経と脾経の交会する場所である。
大腸の募穴は、天枢。大腸の募穴であるが、部位的には小腸とも関係があると思う。経絡では胃経に属する。帯脈と関係から肝胆とも関係があると思われる。天枢はまだ研究中なのでなんともいえない。
胃の募穴は、中脘。ここは重要ポイントで単純に圧痛は胃の不調と考えてもいいと思うが、経絡の終始する場所なので、ここに問題があると全経絡に問題があると考えることもできると思う。中脘は任脈上にあり、ツボもひとつだけなので特別な存在だと思う。肝臓や胆のう疾患に効果的と思われる。圧痛やコリなどの反応が起こりやすい。
脾の募穴は、章門。個人的には左章門は脾臓との関係が深く、右章門は肝臓と関係があると考えている。経絡的には肝経に属するし、肝経と胆経の会するところである。肝鬱気滞の場合にこのツボに反応が出やすいといわれている。慢性の頑固な病がある場合は章門を治療することもある。
心の募穴は、巨闕。圧痛やつまりが出やすいポイントであるが、心臓の反応もあるが、胃の反応も出やすい。頭部の問題がある場合は反応が出やすいこともある。
小腸の募穴は、関元。丹田・腎とも関係があると思う。関元に力がない場合は免疫力の低下も考えられるのかもしれない。血とも関係があるのは、小腸ー心の関係があると思うが、腸管造血説とも関係があるのかもしれない。また丹田の丹は赤色のことであり、赤は心に属する。
膀胱の募穴は、中極。膀胱経との関係から背部の筋肉(脊柱起立筋)とも関係があると思う。男性の場合は前立腺、女性の場合は子宮との関係も考えられる。関元もそうだが頭部の症状にも効果がある。この場合は頭(上)と下腹部(下)の関係になる。
腎の募穴は、京門。沢田流では腰部の志室付近に取る。京門は胆経である。個人的にはこのツボはまだわからないことが多い。沢田流と通常の募穴の関係がまだよくわからない。個人的には志室付近は腎の関係から重要と考えているので、沢田流の京門を重視することの方が多い。この場合は募穴診というよりは、腰部の触診または背候診ということになると思う。
心包の募穴は、膻中。代田文誌先生が主張したといわれている。個人的にはここはあまり診ない。保留中。任脈。
三焦の募穴は、石門。気海や関元も含めてこの範囲を丹田と考えている。研究中。任脈。
胆の募穴は、日月。ここもまだよくわからない。胆経。
肝の募穴は、期門。中医学や一般的には肋間に取るが、個人的にはお灸では沢田流の肋下期門を重視している。個人的にはこのツボは右側では肝臓の状態を診ることが多いので重視している。あくまで「期門周辺」を重視している。同時に胸脇苦満を診ている。
期門は陰気(寒気)と関係があると思われる点から、冷えが強い時に炎症反応が出やすいのではないかと考えている。寒は腎と関係があるが、肝とも関係があるように思える。炎症反応が強い場合は、脈は浮や数のこともある。
募穴だけを考えてもいろいろと見えてくるものがある。募穴は臓腑の病変検査や分析点として使えるが、治療点としては、中脘、関元、石門(治療点としては石門ではなく、気海の方を重視している)の任脈の3点を重視し、肝臓の関係で期門、腸の関係で天枢を重視している。