「万病の原因は足の弱さ」といういわゆる病をひとつの根本原因に考えるものがある。
「足は第2の心臓」といわれているので、足を強くすることで、健康になるということになる考え方である。
足三里にお灸をすることで、胃が治り、疲労が回復して長生きできるというのは、昔からいわれていることである。またお灸の特効穴治療では足にお灸をすることも多い。
歯槽膿漏の特効穴治療では、踵にある女膝というツボに持続的に多壮灸を行うと効果がある意見や、食中毒には足裏の裏内庭に多壮灸するという話は有名である。
またふくらはぎに対する手技や温灸法は確かな効果はある。
30歳を過ぎると、気が頭に上がりやすくなるので、足三里にお灸することがいいといわれているが、個人的には、気を引き下げる意味では、気海や関元に多壮灸をした方がいいと思う。
どちらにしても年を取ると気が上がりやすく、イライラしたり、頑固になることも多いが、今の世の中、若い人もすぐに切れることも多いので、治療上、気を引き下げるという観点は大事だと思う。若い人の気が頭に上がりやすくなる原因は、ネットやゲームだと思う。あとはジャンクフードだろうか。
足の筋力の弱さ、足関節の歪みなどにより、体の下からバランスが崩れていくこともある。
個人的には、手足は姿勢に大きな影響を与えると思うし、特に足の構造的な歪みが上の関節に影響を与えると思う。
足は体を支える土台となっていて、足に歪みがあると真っ直ぐ立つことすらできず、体は常に傾いた状態になる。
足部の温灸治療を行い、足部の安定を目指しつつ、足の冷え(または熱)を解消し、気を引き下げることは、本格的な腹部温灸治療の準備的な意味もある。やはり腹部温灸治療は人によっては刺激は強いことがある。
基本的な足温灸の方法には、ふくらはぎの処置は含めていない。ふくらはぎへの温灸法は、足温灸とは別ものと考えている。もちろん行ってもいいと思うが、そのあたりの技術の整理はまだできていない。
足の温灸と腹部の温灸というシンプルな組み合わせ治療であるが、体の土台(足)と体の中心(腹)の治療という意味ではある程度は、論理的なものではないかと思っている。ただこれは特に新しい治療でも、変わった治療でも、特別な治療でもない。たぶん似たようなことをやっている人は多いだろう。
あくまで足と腹のみに絞った方が効果の判定がしやすく、初学者には特にわかりやすいと思う。治療点の集中はある程度は必要で、不安感やサービス精神で、治療しすぎると治療効果が減少するだけではなく、悪化の可能性もあると思う。その辺をどう整理して、治療を終了させるのかも意外と難しい。
自然治癒力を信じているのであれば、その邪魔になるようなことはできるだけ控えるのが、自然ではないかと思う。それを考えると、治療点の集中はある程度は必要だと思う。
ただし、今の世の中は症状や痛みなどが複雑化してきており、原因の特定が単純ではなく、難しくなってきているのは事実だと思う。正直、わからないことの方が多い。