お灸治療で大切にしていることは、東洋医学に基づく哲学、理論、技法である。
具体的にはもぐさを固めたものをツボにおき、火をつけて、熱を加えることで、体に作用させることである。
触診でツボを見つけて、お灸をする。
ターゲットとなるツボは、体の表現のひとつである。
触診により、反応しているツボは結果であり、体における歪みを作り出している原因でもある。
お灸技法の考え方に、ツボの左右両側にお灸をするというものがある。
これはお灸は体に対する作用が強く、大きな変化を起こすから、片側のみではバランスが悪くなる理由らしい。
基本的には、正経にはそういった考えも必要なのかもしれないが、任脈や督脈などにお灸をする場合は、右も左も基本的には関係なく、ツボはひとつである。
左右にツボがある場合でも、片側のみにお灸をすることも必要だと思っている。
気の偏在を意図的に作り出すことも治療上必要になる場合もあるし、片側のみのお灸でもバランスが整うこともあると考えているからである。
中国の神医の華佗は、お灸で治療する場合は、1~2穴で、多くても7~8壮だったらしい。
お灸の技法においては、シンプルなものがよいと思っている。
最終的には、ほぼすべての患者に同じ灸法を用いるということである。
理由は生命力の向上で、身体機能という能力向上を目的にしているからである。
その技法のヒントに扁鵲灸法がある。
扁鵲や華佗は、神医と言われているし、伝説的な話も多いので、真実かどうかわからないこともある。
ただ仮にフィクションだとしても、それが感情(気)に訴えるもので、夢中にさせる何かがあれば、それを嘘の話として切り捨てるようなことはできない。