扁鵲心書は、南宋の實材によって編纂された灸の専門書で、総論部分に「住世之法」という話がある。
古代中国に、王超という兵士がいた。
王超は90歳の高齢者だが、若々しく助平で盗みばかりしていた。
そして、逮捕されて、死刑に処せられることになった。
刑の執行前に、役人が王超に「お前は何か変わった術を行っていると聞くが本当か?」 と質問した。
王超は「何も特別なことはしていない。 ただ夏から秋への季節の変わり目に、関元に灸を千壮すえているだけだ。 しばらくこれを続けていると、寒暑をおそれることもなくなり、 何日も食事をしなくても飢えを覚えることがなくなった。今では臍下に火のように暖かい塊がある。土は焼くと瓦になり、木は炭になって千年経っても朽ちないが、これはみな火の力によるものである」 と答えた。
処刑後、王超の下腹部を解剖してみると、 肉でもなく、 骨でもない、石のような塊が現れた。
實材は、扁鵲心書で、関元への多壮灸の重要性を強調している。
これが「関元一点灸」の元ネタである。
ちなみに扁鵲心書は、偽書という意見もある。
関元は、邪気がたまりやすいツボと聞いたことがある。
関元への多壮灸は、非常に元気になるのかもしれないけど、王超は助平で盗みばかりしていた罪人である。
関元は丹田とも呼ばれて、この奥に先天の原気を宿している。
関元の灸は、この原気を補うのに役に立つ。