免疫とは、自分と違う異物を攻撃し、排除しようとする体の防御システムである。
ウィルスや細菌などの病気の原因になる病原体が体内に侵入したとき、体は自分とは違うものが入り込んだと判断し、排除しようとする。
免疫力とはその力になる。
免疫と関わりが深いのは血液で、主に白血球が重要な役割を担っている。
白血球は、免疫細胞とも呼ばれている。
免疫細胞は骨髄、胸腺、リンパ節、血管、膵臓、腸などの器官で作られる。
骨髄には、リンパ球や赤血球の元になる造血幹細胞が存在している。
白血球は、造血幹細胞から分裂して生まれてきたものである。
白血球には、顆粒球、単球、リンパ球がある。
顆粒球は、細胞質に殺菌作用を持つ顆粒を含んでいる。
90%が好中球で、主に病原体や細菌などを食べる作用がある。
残り10%は好酸球、好塩基球である。
単球から分化したものをマクロファージといい、病原体や細菌などを食べて消化する大食細胞と呼ばれる。有害物質の抗原情報をリンパ球に提供する役割がある。
リンパ球は、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞、B細胞、NK細胞がある。
体内に侵入した細菌やウイルスに対して働く免疫細胞(主に顆粒球とリンパ球)は、細菌は主に顆粒球が攻撃するといわれている。ウィルスは主にリンパ球が攻撃するといわれている。
白血球の数と、顆粒球とリンパ球のバランスを考えるのは、細菌やウイルスに感染しやすいかどうかということにもなる。また感染したとしても活性化、発病しやすいかという話にもなる。
リンパ球や顆粒球が十分にあっても、体温が低い場合は、リンパ球や顆粒球の働きが悪くなるといわれている。そのため、低体温では免疫力は低下するといわれている。
実際、低体温で冷え性は多いと思うし、血液の流れが悪いと思うので、白血球を含む血液の活動は低下する可能性はあるだろう。
おそらく、「温めれば、病気は治る」という主張はこの辺からきているのではないだろうか。
東洋医学では、血液の流れがよくなることが健康につながると言っているが、これは一応正しいと思う。
お灸で温めて、心身をリラックスさせたり、体温を上げたり、血液の流れや状態をよくするというシンプルな目的が健康につながる。
しかし、なぜお灸の刺激が、脳の中枢に届き、自律神経を整えて、病気を治癒させるのか、ツボや刺激方法によって神経への働き方がそれぞれ違うのかはわからない。
免疫力を高めるとは、血液、特に白血球の機能を良好な状態にすることともいえる(すべてではないと思うが)。免疫バランスが崩れると、免疫の低下や免疫の異常が起こることにより、さまざまな病気を引き起こすことになる。
これはある程度、医学的、科学的に血液などのデータとして数値化することができるのかもしれない。
例として、お灸の研究で博士号を取った医師の原志免太郎先生は、ウサギにお灸をして血液を調べたところ、赤血球、血小板などが増え、白血球の食菌作用が強くなったことを発見して、免疫力が高まったと言っている。そしてネズミにお灸をすることで、結核の予防や治療に有効と言っている。
結核予防の灸法として、足三里と腰部八点灸の原式灸法を行っていた。そして原先生が108歳まで生きられたことから説得力のあるものといわれている。
鍼灸と自然治癒力の関係を自律神経の機能という生理学的な観点から研究している例もある。
自律神経がアンバランスになると、自然治癒力がうまく働かなくなり、お腹や背中の上部が凝ったり、緊張したりするらしい。この点からも腹診や背候診の必要性がよくわかる。そして疲れやすく、苛立ちやすく、肩こりや腰痛になりやすいようだ。このような人の血圧、心拍数、呼吸数を調べてみると、交感神経が緊張しているらしい。
このような場合は、ソフトな鍼灸治療による刺激を加えることで、過剰になっている交感神経の機能を抑制し、副交感神経の機能を高めて、体をリラックスさせることができるらしい。自律神経の機能はポリグラフで測定するらしい。交感神経の緊張が緩和されると筋肉の緊張が緩み、血管が拡張することで、冷えた体の部位が温かくなるらしい。
交感神経と副交感神経の適度な緊張のバランスを作り出すことで、自然治癒力は高まるらしい。
お灸で免疫力を高めるとはどういうことだろうか。
結局、病気が治った、効果が出た、体が温かくなった、体が柔らかくなったなどの結果が説得力になっていたり、認めてもらっていたりするだけの話である。
もちろんこれは大事なことではあるが、不確実なことである。
お灸治療はあくまで可能性に頼った医学・医療なのだろうか。
それはまだわからない。
ただ今のところは僕のお灸治療は、可能性のひとつにしか過ぎないと思っている。